桜色のブログ

コーヒーと旅とおいしいもの、ときどき本を徒然なるままに

【お菓子な小説】和菓子から洋菓子まで!甘いだけじゃないスイーツ小説・厳選20選!

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こんにちは。すっかり秋ですね🍁。おいしいものがたくさんあるこの季節、食べすぎには注意したいところですが、甘いものは別腹!

というわけで、今回は食欲の秋と読書の秋を同時に満たしてくれるおいしいスイーツ小説をご紹介していきたいと思います🍰。

和菓子、洋菓子、駄菓子まで、みなさんのお気に入りのスイーツは何でしょう?
 

日本人ならやっぱり和菓子?和菓子小説大集合!

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和菓子のアン / 坂木 司

デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの18歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。

謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは? 読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる、美味しいお仕事ミステリー!

実は実は、和菓子、苦手だったのです😣。。子供の頃、餡子がダメで、おまんじゅうやたい焼きに至っては皮も苦手で。。地味だし、ほとんど同じ餡子味だし、和菓子に全く魅力を感じていませんでした。それなのにこの本を読んだ後、デパ地下の和菓子売り場へ自ら足を運んでしまったのだから、面白い本ってすごいですよね。

和菓子に興味がなくても、繊細な職人技や季節を表現する心、菓子の名前に込められた物語など、その魅力的な世界に引き込まれます。

主人公のアンちゃんが食べることが大好きで、とってもおいしそうに食べるせいもあって「食わず嫌いだったかも?」と和菓子に向き合いたくなってきてしまいます。

今ではすっかり餡子も食べられるようになりました!

和菓子が苦手な方は餡子クリームとか抹茶アイスのような和洋折衷スイーツから入ると意外といけるようになるかもしれませんよ。

続編も出ています。今回もふんだんのあんことたっぷりの謎をご用意。デパートという場所柄いろんなお客様がやってきます。みつ屋の個性的な仲間も東京デパートの同僚たちも、相変わらずいい味出してます。つまずいたり悩んだりしながら、アンちゃんが成長してゆく姿を見守りたくなります。

待望の最新作!成人式を迎えるアンちゃん。人間関係にも変化が訪れ・・。

 

和菓子のアンソロジー

「和菓子」をモチーフに、短編を一作書いていただけませんか?

読書家としても知られる『和菓子のアン』の著者・坂木司が、今いちばん読みたい人気作家たちに執筆を依頼。

日常の謎を描くミステリーから、壮大な世界観を展開するSF、心温まる優しい怪談まで、さまざまな読み味の作品が揃いました。疲れたときに読みたくなる、宝箱のような一冊。

和菓子をテーマに10人の作家さんの作品を集めた短編集です。知っている作家さんもいれば初めましての作家さんもいて、それぞれの切り口でバラエティ豊かな作品が楽しめる一冊です。

 

まるまるの毬 / 西條 奈加

親子三代で菓子を商う「南星屋」は、売り切れご免の繁盛店。

武家の身分を捨て、職人となった治兵衛を主に、出戻り娘のお永と一粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、他人に言えぬ秘密があった。

愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。

江戸時代の菓子屋を舞台にした人情小説。

終始ほのぼのとしたお話かと思いきや、出生の秘密などハラハラする展開も。家族愛と素朴なお菓子にじんわりと心が温かくなる小説です。

治兵衛さんのお菓子食べてみたいなあ~。

待望の続編も!全国各地の銘菓を作り、味は絶品、値は手ごろと大繁盛の「南星屋」だったが、治兵衛が手を痛め、粉を捏ねるのもままならぬ事態に。不安と苛立ちが募る中、店の前に雲平という男が行き倒れていた。聞けば京より来たらしいが、何か問題を抱えているようで――。

 

深川二幸堂菓子こよみ / 知野 みさき

「餡子だけじゃつまらねぇ。菓子を作れよ、孝次郎―」

深川で菓子屋「二幸堂」を始めた兄・光太郎と弟・孝次郎。

ほんのり甘酒香る薄皮饅頭「斑雪」、桜の花弁を模した上生菓子「恋桜」、黄身餡が贅沢な「天道」と十四夜の月の如く控えめな甘さの「幾望」、柳の青葉が風情涼やかな錦玉羹「春の川」、薄紅色の白餡大福「紅福」。

不器用な職人・孝次郎の作るとびきりの菓子が、人と人を繋げ、出会いをもたらし、ささやかな幸福を照らし出す。

江戸の菓子屋を舞台に描かれる、極上の甘味と人情と、つたない恋。兄弟の絆と店を支える人々の温かさに心震える珠玉の時代小説!

朴訥とした職人の弟・孝次郎と男前で社交的な兄・光太郎の兄弟が営む江戸の菓子屋「二幸堂」を舞台にした人情小説です。

不器用ながらお互いを気にかける正反対の兄弟の絆や、美しい和菓子に込められた物語がしみじみと心に残ります。

光太郎と孝次郎の周りの人々も人情味にあふれる人ばかり。特に、助っ人の和菓子に目がないお七さん、気風がよくていい味出しています。お七さんが味見するたびに読み手も食べたくなってしまうのが困ったところ。。

続編も出ています。江戸深川にしっかりと根を下ろしはじめた二幸堂。孝次郎の作るとびきりの菓子が、縁を言祝ぎ、幸いを呼ぶ――。ままならぬ恋の行方も気になるところ。

江戸深川の菓子屋をめぐる極上の時代小説、感動の完結篇!

深川は江戸情緒が残る土地柄だけに「二幸堂」みたいな和菓子屋さん、今でもありそうですよね。江戸から続く老舗って、なんだかロマンがありますね。

 

神様の御用人3 / 浅葉 なつ

神様たちの御用を聞いて回る人間──“御用人”。

ある日突然、フリーターの良彦は、狐神からその役目を命じられた。膝を壊して野球の道を諦め、おまけに就職先まで失った良彦は、古事記やら民話やらに登場する神々に振り回されることになり―!?

特殊能力もない、不思議な道具も持ってない、ごく普通の“人間”が神様にできること。それは果たして、助っ人なのかパシリなのか。けれどそこには、確かに神々の「秘めたる願い」があった。

神様の願いを普通の人間が叶えるという『神様の御用人』シリーズの3作目。なぜこの本をご紹介するかというと、本作にはお菓子作りの元祖たるお菓子の神様が登場するからです!

お菓子の神様がいらしたとは😲この本を読むまで知らなかったのですが、田道間守命様というこの神様、「はっぴーたーんの粉が何で出来ているかもわからない、自分は崇められるような存在ではない」と悩んでいる姿がなんともいじらしく、主人公の良彦でなくても力になりたくなってしまいます。

良彦と相方ともいえるモフモフな神様とのやりとりや、スイーツ三昧で肥満危機に陥ってしまう様子にもクスッと癒されますが、なにより良彦が神様の悩みの本質に踏み込んで根本的に解決していく姿が感動的です。

『神様の御用人』は、誰もが知っているメジャーな神様から「そんな神様いたんだ!面白い!」というマイナーな神様まで、さすがは八百万の神の国、と思わせる個性豊かな神様たちが登場し、古事記や万葉集などの解釈にいろんな想像が膨らむシリーズです。興味があれば、ぜひ最初から読んでみてください。

 

秋期限定栗きんとん事件 / 米澤 穂信

小市民を目指す小鳩君と小山内さんのシリーズ第三弾。

あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい…。

こちらもシリーズものの3作目ですが、栗きんとんが重要なポイントになっているので和菓子コーナーに入れてみました。栗きんとんといえばおせち料理のイメージですが、和菓子の栗きんとんもあるんですね。

1、2作目は短編集なのですが、3作目にして上下巻にわたる長編です。表紙の絵やコミカルな探偵物語と銘打っているところからライトなミステリーを想像しますが、連続放火事件という重めの事件を軸に、小鳩君と小山内さんがそれぞれ暗躍していきます。

二人の、特に小山内さんの性格のダークさがより一層わかる作品なので、もしかしたら好き嫌い分かれるかもしれませんが、個人的には曲者二人のコンビが面白いシリーズです。

それにしてもこの二人、小市民になれるんだろうか??

 

やっぱり洋菓子派?甘いだけじゃないスイーツ小説大集合!

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春期限定いちごタルト事件 / 米澤 穂信

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。

名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?

小市民を目指す小鳩君と小山内さんのコミカル探偵物語。

やっぱり最初から読みたい小市民シリーズの第一弾。

ヒロインの小山内さんが甘いものが大好きなので、スイーツがたくさん登場します。が、作者の米澤先生はもしかしたらあんまり甘いものがお好きじゃないのかも・・?という気もしました。スイーツ類が「おいしそう!食べたい!」とそそられる感じの描かれ方じゃないんですよね・・。そんなわけで、スイーツ欲という点ではそんなに刺激される作品ではありませんが、シリーズものとして面白いのでおすすめします。

いわゆる日常の謎を解き明かすミステリーで、まずは自己紹介的な1冊目ですね。特に『おいしいココアの作り方』は超シンプルに日常のあるあるな謎を考えるお話で、目から鱗です。

だんだん二人がなぜ小市民を目指しているのか、というところが明かされていくのも見どころです。

続編は夏休みのお話、“小佐内スイーツセレクション・夏”と銘打った小山内さんがこの夏どうしても食べたいスイーツめぐりに付き合う小鳩君。でも、その裏には事件が・・。

春期限定とそんなに変わらないテイストで進んでいくのかと思いきや二人の関係に変化が訪れる展開は必見。

ところで「トロピカルパフェのおいしさはフルーツのおいしさでは?」という小鳩君の意見には賛成かもしれせん。

夏期限定の次は和菓子コーナーで紹介した秋期限定。その次は冬期かと思っていたら違いました。。こちらは短編集です。

 

とっておきのおやつ。 5つのおやつアンソロジー

“レンタルフレンド”を依頼した女子大生は、なぜデザートブッフェに行きたいのか、神社のキツネに運命の恋をした少女とたい焼き、年の差姉妹をつなぐ秘密とフレンチトースト、御曹司ふたりが作るプリンアラモード、見知らぬおじさんに「あんみつを一緒に食べてくれないか」と頼まれた俺。

甘くて可愛いだけじゃない、どこかスパイスの効いたおいしい話。全五編!

お菓子の家から表紙からして、甘いもの好きの心をくすぐる一冊。

デザートビュッフェにたい焼き、フレンチトーストなどなど、おやつをテーマに5人の作家さんの作品を集めた短編集。

個人的には、父親が脱サラして突然たい焼きやを始めてしまい不満を抱える女の子が神社で狐目の青年に人生相談をする「たぬきとキツネと恋のたい焼き」と、見知らぬ紳士にあんみつを一緒に食べてほしいと頼まれた若者のお話「おじさんと俺」が印象に残りました。

 

アリクイのいんぼう / 鳩見 すた

「人がハンコを作る時には事情があります」そう語るのは喫茶店にして印章店という『有久井印房』の店主。しかしその姿はどう見ても白いアリクイで、なおかつ少々ふっくら気味。そんな店長をサポートするのは、ウェイトレスの宇佐ちゃんと、キザなカピバラのかぴおくん。

「ハンコを作ってください!あれ、なんでシロクマが?」 訪れ驚くお客さんに「ぼくはアリクイです」と静かに出されるコーヒー。不思議なお店で静かに始まる、縁とハンコの物語。

いんぼうとは印房のことで、ハンコ屋さんとカフェを一緒にやっていて、しかも店主はどう見てもアリクイという不思議なお店に訪れる人々のお話です。

今まさに廃止の動きがあるハンコ、確かに簡略化できれば効率的になることも多いのですが、人生の節目で押されるハンコにはいろいろな物語があることに気付かされ、「ハンコ、素敵な文化だな~」と思えます。

悩めるお客たちに提供されるお菓子に飲み物、すべておいしそう!!こんないんぼうあったら絶対行きますね。

短編ですが、それぞれに登場したお客が違うお話にも登場してきて、その後どんな風に生きているのかというのも垣間見えて嬉しくなります。

どのお話もほっこりしますが、特に音大生の女の子と恩師のお話が泣けました。「夢を追いかけて」「諦めないで」とよく歌の歌詞にはありますが、現実にはそうもいかないですよね。続ける勇気と諦めて新しい道へ進む勇気は同じくらい尊いというメッセージが感動的でした。

 シリーズ4作目まで出ています。 アリクイさんかわいいですなあ。

 

満月珈琲店の星詠み / 望月 麻衣

満月の夜にだけ現れる満月珈琲店では、猫のマスターと店員が、極上のスイーツやフードとドリンクで客をもてなす。

スランプ中のシナリオ・ライター、不倫未遂のディレクター、恋するIT起業家・・・、マスターは訪問客の星の動きを「詠む」。悩める人々を星はどう導くか。

美しいイラストにインスパイアされた書き下ろし小説。

とにかく表紙のイラストが素敵でうっとり。表紙買いですね。

満月の夜にだけ現れる猫の珈琲店という不思議な設定に、水瓶座のトライフル、惑星アイスのアフォガード、満月バターのホットケーキ、水星のクリームソーダな夜空を思わせるメニューの数々も素敵。

ただ、思った以上に星詠みの要素が強く、星詠み>>珈琲店という感じでした。

星詠みはアクセントくらいかと勝手に思い込んでいたところ、がっつり占星術のお話で、むしろそちらがメイン。

人生に迷ったお客たちが占星術によってそれまでの人生を紐解いてアドバイスをもらうというスタイルのお話で、小説の途中に本格的な占星術の解説書が混ざっているような印象だったので、占いの類が好きかどうかで評価が変わりそうな作品です。

 

御子柴くんの甘味と捜査 / 若竹 七海

長野県警から警視庁捜査共助課へ出向した御子柴刑事。甘党の上司や同僚からなにかしらスイーツを要求されるが、日々起こる事件は、ビターなものばかり。

上田市の山中で不審死体が発見されると身元を探り(哀愁のくるみ餅事件)、軽井沢の教会で逃亡犯を待ち受ける(不審なプリン事件)。

傑作ミステリー・葉村晶シリーズ第一弾『プレゼント』に登場した御子柴くんが主役の、スイーツ&ビターなミステリー短篇集。

甘味好きな上司に振り回される刑事・御子柴くんが担当する事件の数々は、まったく甘くありません。むしろ苦め。

この作品に甘味が必要不可欠かというと「うーんどうなんだろう??」という気はしますが、長野と東京のご当地スイーツを要求され、奮闘する苦労人な御子柴くんを応援したくなります。

シリーズ第二弾は波瀾の幕開け!

 

 親王殿下のパティシエール / 篠原 悠希

華人移民を母に持つフランス生まれのマリー・趙は、ひょんなことから清の皇帝・乾隆帝の第十七皇子・愛新覚羅永璘お抱えの糕點厨師見習いとして北京で働くことに。

男性厨師ばかりの清の御膳房で、皇子を取り巻く家庭や宮廷の駆け引きの中、マリーはパティシエールとして独り立ちできるのか!?

華やかな宮廷文化と満漢の美食が繰り広げる、中華ロマン物語。

清の時代の中国が舞台、主人公はフランスからやってきた女の子という一風変わった設定の小説です。

フランス菓子を作りたくとも、勝手の違う厨房で必要な道具や材料がない中で工夫していくマリー。異国のしかも男性中心の職場で前例のない女性の菓子職人ということで苦労もありますが、なんだかんだ周りの人に恵まれ愛されています。

個人的には、皇子との出会いや、気に入られた経緯、フランスから清国への道中の方が気になってしまい、そちらのエピソードの方が読みたかったかも?

マリーが皇子を呼び捨てにして周りから不敬だと怒られるシーンがちょいちょい出てくるのですが、文化の違いを知らない状態ならまだしも、何度も諭されているなかで「癖だから」「独り言だから」ではちょっと危機感が薄く感じてしまうので、せめて皇子との関係性がわかればな~と思いました。

それにしてもこの本、なぜかお菓子よりも中華点心が無性に食べたくなってしまった不思議。。

 

金沢金魚館 / みゆ

金沢にある「金魚館」というレトロな純喫茶店に集う魅力的ながら問題の多い人々・・・ 彼らがまき起こす不思議な事件の謎を、喫茶店で働く古井戸薄荷と別流瀬隆治、常連客で女子大生の花純が解いていく!

金沢のひがし茶屋街で、近江町市場で、路地裏で。人々の想いが絡まる街で、迷える青年・古井戸の密かな冒険が始まるー!

古都・金沢にある「金魚館」という純喫茶を舞台にした小説。レトロな喫茶店の雰囲気やコーヒーの香りや美しいカップが目に浮かぶようです。レトロ喫茶、よいですね。

人には見えないものが視えてしまうという特殊能力のため人とうまく接することができない古井戸くん。知らないお客からすると空気読めない店員さんに見えてしまいますが、店主の別流瀬さん、常連客の花純ちゃんがフォローしつつ金魚館にやってくるお客たちの謎を解いていきます。個人的にはブルーマウンテンの話がよかったです。

古井戸くんに超能力的な力があるためちょっとファンタジーな要素もあります。また彼の不安定さが終始なんともいえない不安で不思議な世界観を作っていました。

 

難事件カフェ / 似鳥 鶏

洋菓子が美味しい喫茶店プリエールは、店主の兄・季と、元警官でパティシエ役の弟・智が切り盛りする隠れ家的お店だ。優秀な警官だった智を連れ戻そうと店に詰め掛けるのは、県警秘書室の直ちゃん。彼女が持ち込む未解決事件を、兄弟で捜査することになって――。

四つの奇妙な殺人事件を、名探偵の兄弟の絆と甘いケーキが解決に導く。ほろ苦く切ない傑作ミステリー。

警察が捜査に行き詰った事件を秘書室の直ちゃんが持ち込んできては優秀な元刑事の弟が鮮やかに解決します。

弟を守りたいお兄ちゃんと一番曲者っぽい直ちゃんのキャラもいい感じ・・ですが、事件の真相はだいぶビターです。

それにしてもプリエールのケーキ、本当に美味しそうです。推理力抜群でケーキも作れるとは、どんだけ万能なんだ弟くん。

 

ダージリンは死を招く お茶と探偵 / ローラ・チャイルズ

紅茶とお菓子がいっぱい、でも死体がひとつ。 お茶目でキュートな名探偵登場!

こだわりのティー・ショップを営むセオドシアは36歳。アメリカ屈指の茶葉鑑定人と、一流の菓子職人の3人で切り盛りする店は、いつも常連客でいっぱい。毎年恒例の出張ティーサロンは今年も大盛況……のはずが、カップを持ったまま死んでいる男が発見されたから、さあ大変。容疑をかけられた大切な友人の無実を証明するため、セオドシアが素人探偵となって殺人事件に挑む、シリーズ第1弾!巻末には紅茶レシピ付き。

アメリカのチャールストンでティーショップを営むセオドシアが事件に巻き込まれるお茶と探偵シリーズ。

主人公が名探偵ということになっていますが、推理で解決しているわけではなく、行き当たりばったりの行動の結果、棚ぼた的な偶然で真相にたどり着いてしまうので、名探偵扱いはちょっとおかしな感じはしますし、いろいろツッコミどころはあるかも?

正直なところミステリー作品としてはそんなにおすすめできないのですが、おいしいお茶とお菓子が欲しくなるという点においては、とってもおすすめしたくなる作品です! 

茶葉の専門家のドレイトンが丁寧に入れたお茶とパティシエのヘイリーお手製のお菓子が本当においしそう。まあ、この二人がスペシャリストすぎるために、仕事面でも主人公の優秀さがイマイチ読者に伝わってこないような気もしますが。。

と、なんだかんだ言いましたが、読んでいてティータイムしたくなる作品です。

また、歴史的建造物が並ぶチャールストンの街の様子もとても魅力的に描かれていて、行ってみたくなります。

 

おやつが好き / 坂木 司

『和菓子のアン』の著者の初エッセイ集は、やっぱりお菓子!ああもう、全部食べたい。銀座の名店から市販のお菓子まで。ふわふわ、サクサクのホロホロ、こってりあっさりの奇跡の融合に、パリパリカリポリ、つるんとなめらかにさらさらと語り尽くします。お菓子にまつわる単行本未収録の小説も併録。

スイーツの箱みたいな装丁もお洒落な一冊。おやつにまつわるエッセイ集ですが、短編小説も2本収録されており、いずれも素敵なお話でした。

エッセイはリアルアンちゃんを思わせる坂木先生のおやつ愛があふれています。アンちゃんのお菓子を語る時の熱量は坂木先生から来ていたんだな~と納得。

坂木先生が東京生まれということと『銀座百点』に掲載されたエッセイということで、銀座で食べられるおやつが中心に紹介されています。

資生堂パーラー、空也、ウエスト、千疋屋、ピエール マルコリーニ、松崎煎餅などなど、銀座でおなじみの名店がズラリ。

「うんうん、和光の喫茶室は入るのためらわれるよな~(←いまだに行ったことない小心者💦)」とか「えっ、メルヘンって全国展開じゃないの!?」とか「確かにウエストはリーフパイの無難なイメージだよねー」とか、共感できるポイントもあり面白かったです。

ウエストといえば、初めて喫茶室に入ったときに違う時代に来たみたいなクラシカルな空気に驚きましたっけ。コーヒー以外の飲み物もお代わり自由で、ゆったりと寛ぐ人々に「もしかして有閑マダムとか有閑ムッシュって自分が思っているよりもたくさんいるんだろうか??」と思ったり。時間の流れが違う感じがしましたね。

新しいスポットから、古き良き老舗、表通りから裏路地まで風情があって銀座はやっぱり大好きな街だと改めて思いました。なかなかコロナで外食できませんが😢、また銀座に行きたいな~。

 

子供も大人も読みたいお菓子な児童文学

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 / 廣嶋 玲子

真由美は首をかしげた。あんなところに、駄菓子屋さんなんてあったっけ?路地の壁にはりつくような形の店で、まるで商店街から身をかくしているよう。この道は、もう何百回と通っているけど、あんな店、見たことない…。

商店街の大通りをそれた脇道、その奥に一軒の駄菓子屋がありました。そこで売っている駄菓子は見たことがないものばかり。駄菓子を買った人たちにどんな運命が待っているのでしょう。

選ばれた人にしか見えない駄菓子屋さん、奇妙な女店主、見たことのない駄菓子・・、子供が絶対に好きなものを押さえていますね!

グミを作って食べると人魚のように泳げるようになる「型抜き人魚グミ」や、食べるとカリスマ性を発揮し、あらゆる人からもてはやされる「カリスマボンボン」など、ちょっと欲しくなってしまう不思議なパワーを持つ駄菓子を店主の紅子さんから勧められたお客たちは、その後の運命を翻弄されていき・・。

銭天堂に導かれるお客は、子供のこともあれば大人のこともあり、また幸せになることもあれば不幸になることもあります。それは、そのお客次第。

ちゃんと説明書を読まなかったり、約束事を破ったりすると不幸な運命が待ち受けているところは、なんとなく笑ゥせぇるすまんや世にも奇妙な物語を彷彿とさせます。

児童文学らしい教訓もありますが、押しつけがましくなく、ちょっとダークな雰囲気がある点も魅力です。

 

チョコレート戦争 / 大石 真

有名なケーキやさんのウィンドウガラスが割れて、いあわせた明と光一が犯人にされてしまう。「おとなはなんでぼくたちのいうことを信じないの?」 身におぼえのない、罪をきせられたことから、子どもたちは町一番のケーキ屋さんに戦いをいどみます。

大人VS子供のチョコレート戦争勃発!

『チョコレート戦争』というタイトルからして子供心をくすぐりますよね! 子供の頃に図書館で見つけた時、まさにこのタイトルから面白そうな香りを嗅ぎつけた記憶があります。

一方的にガラスを割った犯人にされてしまい、名誉を守るため立ち上がる明と光一。子供なりに戦っていく姿にドキドキしたことを思い出します。

まだ洋菓子が一般的ではなかった時代、人気洋菓子店「金泉堂」のシュークリームやエクレアは子供たちにとって憧れの存在だったんだな~と思います。とってもおいしそう!

言わずと知れた児童文学のロングセラー作品、愛される名作ですね。

 

パティシエ☆すばる / つくも ようこ

小学4年生のすばるは、小学校の「なりたい自分をみつける」授業で、パティシエ先生のケーキ作りの授業をうけ、「パティシエ」になると決心する。友だちのカノン、渚と3人で、パティシエになる!と決心したものの、パティシエってどうやったらなれるの?

「黒い森のケーキ」をマスターしたら、すばらしいパティシエになれると聞いて、有名なケーキ店のマダムに弟子入りしようとするけれど……!?

パティシエを目指す子供たちの成長物語。

児童書ですが、トントン拍子に天才少女パティシエになったり、魔法を使ってパティシエになったりというファンタジー要素はありません。

主人公のすばるたちは、味覚や発想などの才能が突出した天才ではなく、ごく普通の小学生が、堅実に学び、技術を磨いていく姿が描かれています。

子供たちが興味を持った分野に足を踏み入れ、現実的に夢を叶えていくという地に足の着いたストーリーのため、劇的な展開はありませんが、スポンジケーキやチョコレートの作り方など、それぞれの指導は子供だましでなく、細かく本格的に描かれており、お菓子に対する蘊蓄も面白いです。

 

銃とチョコレート / 乙一

大富豪の家を狙い財宝を盗み続ける大悪党ゴディバ。彼を追う国民的ヒーローの名探偵ロイズとの対決は世間の注目の的。事件解決の鍵となる地図を偶然手に入れ、憧れの探偵ロイズと冒険の旅にでる健気で一途な少年リンツ。

王道の探偵小説の痛快さと、仕掛けの意外性の面白さを兼ねる傑作!

人気作家が子供のための本を執筆する講談社ミステリーランドというレーベルから出版された作品です。子供向けといってもしっかり伏線が張られ、二転三転する展開に目が離せないミステリーです。

怪盗に名探偵が登場する冒険譚といえば心躍りますね!

乙一先生作なのでもちろん日本の作品なのですが、まるで海外文学の翻訳ものを読んでいるような感覚になります。映画で見たい感じ。

ゴディバにリンツ、ロイズ、ディーン&デルーカ、ドゥバイヨルなど、登場人物がチョコレートの名前になっています。

おいしそうな名前ですが、みな一筋縄ではいかない人物ばかり。チョコはチョコでもカカオ80%以上のビターチョコといった感じです。

 

最後に

おいしいスイーツ小説、いかがでしたでしょうか。

読んで食べた気になるもよし、読んで食べてみるもよし。

大福、焼き菓子、パフェ、ケーキ、チョコレート・・などなど、お気に入りのお菓子をおともにして読書するのもいいかもしれませんね。